
健康情報小ネタ集
心の病を防ぐ法〜トリプトファンの魅力〜Part-3(月刊健康医学2010/5号)
●心に必要な栄養素
■ビタミン、ミネラルのバランスが大事
統合失調症の研究で有名なカナダの精神医学者エイブラム・ホッファー博士は、ビタミンの体内濃度を変えることにより、精神の健康を保てるとしています。つまり、言い換えてみれば、「栄養不足によって脳の正常な機能が低下する」ということです。確かに、お腹が空くとイライラしますよね。お腹が空くと血液中の血糖値が低くなりますので、血糖値を上げるために副腎からアドレナリンを出します。これが肝臓を刺激し、グリコーゲンを出させて血糖値を上げます。アドレナリンは、心臓を活発にさせ、攻撃性を高めます。このため、低血糖になるとイライラしたり攻撃的な気持ちになるのです。
何も血糖値に限ることではありません。脳の正常な働きは、ビタミンやミネラルの安定した供給が必要であり、バランスが崩れることで精神疾患と見られる症状があらわれることがわかっています。ホッファー博士は、統合失調症の発病原因と治療法を研究し、ビタミンB3(ナイアシン)による治療法を開発し、画期的な成果をあげています。
■ビタミンとミネラルで感情をコントロール
ビタミンやミネラルは、人間のホルモン分泌に大きく関わっています。
ホッファー博士が臨床で実証しているように、体内のビタミンの濃度で自分の精神をある程度コントロールできる、または、心の病の予防が出来ると言うことです。ここで、一般的に言われているビタミンが及ぼす影響をまとめてみました。
まず、ビタミンB群。糖質がエネルギーになるために必要なビタミンで、特に神経作用に関係する栄養素です。
▼ビタミンB1(チアミン)
ビタミンB1が欠乏すると、無感動、錯乱、情緒不安定、興奮性、うつ、疲れ、不眠、頭痛、消化不良、下痢、手足のしびれなどの症状がおこりやすいと言われています。また、攻撃性が高まり、音に過敏になる傾向がみられます。
アメリカで、治験者をビタミンB1不足にさせて実験を行ったところ、うつ症状が現れ、けんかしやすく、不安感が強くなったという結果が出たそうです。
ビタミンB1欠乏を引き起こしやすくする食べ物は、(玄米・胚芽米に比べ)白米、精白糖、アルコールなどで、タバコやカフェインを含む刺激物もビタミンB1を消費するため欠乏しやすくなります。
▼ビタミンB2
欠乏すると、眉毛が薄くなるなどの脱毛が見られるようになります。また、光に対して過敏症になりやすいと言われています。
▼ビタミンB3(ナイアシン)
皮膚と精神のビタミンといわれており、糖代謝、脂質代謝で重要な働きに欠かせません。欠乏すると、ヒステリック、うつ、疑い深い、ストレスに弱くなると言われています。
ナイアシンを補給するには、玄米・米糠・かつお・落花生・キハダマグロ・豚や牛のレバー・ブリなどに多く含まれているとされています。ナイアシン欠乏を予防するには、砂糖、甘味料、菓子類、油脂類の食品を摂りすぎないことが大切です。近年、ナイアシンが統合失調症の治療に大きな効果があることが発表されているのは先述の通りです。
▼ビタミンB5(パトンテン酸)
抗ストレス作用。副腎の機能を助けるビタミンです。欠乏すると、疲れ、食欲不振、便秘、不満、低血圧、胃痛、脚の痛みの症状が出ることがあります。
食品としては納豆、ピーナッツ、えんどう豆で補給出来るとされています。加工食品を食べ過ぎると不足を引き起こすので気をつけましょう。
▼ビタミンB6
タンパク質代謝に重要な役割があるビタミンです。また、トリプトファンがビタミンB3に変化するのを助け、老化を防ぐ核酸の正常な合成を促進する役目があります。
そして、マグネシウムと共に摂取すると自閉症の症状が改善するという報告があります。
砂糖の多い食生活は、ビタミンB6の不足を増大させますので、気をつけましょう。
▼ビタミンB12
造血に欠かせないビタミンです。欠乏は、悪性貧血をおこし、疲れ、神経過敏が起こりやすいです。
高齢者は特に欠乏に注意が必要です。ほうれん草、野菜の葉などで補給しましょう。
▼葉酸
ビタミンB12と相互関係があり、両方とも欠乏しないことが重要です。欠乏すると、無感動、ひきこもり、興奮、知的活動の低下が起こりやすいと言われています。
▼ビタミンH(ビオチン)
白髪、脱毛予防でも知られているビタミンですが、欠乏すると、うつ、眠気、倦怠感、吐き気、食欲不振、筋肉痛、触覚過敏の症状がみられるといわれています。抗生物質の摂りすぎはビオチンの欠乏になりやすいので、薬物治療を行っている人は要注意です。
納豆やナッツ類で補給出来ます。
▼ビタミンC(アスコルビン酸)
抗ストレスホルモンのステロイドを合成しますので、ストレスの多い生活の人は多めに摂りましょう。
欠乏すると、疲労、うつ、倦怠感、錯乱をおこしやすいとされています。
また、重い精神疾患の人は多くのビタミンCが必要と言われています。
▼ビタミンA
欠乏すると、不眠、疲労、うつ、末梢神経痛を起こします。しかし、過剰摂取も問題が生じます。過剰摂取は、脳の中の体液圧力を増大させ膨張させ、イライラ、うつ、体重減少、皮膚の乾燥、脱毛などが起きます。
脂溶性ビタミンだけに、過剰摂取は禁物です。
▼ビタミンE
心身の健康に欠かせないビタミンです。神経過敏、疲労、不眠、心悸亢進、めまいなどの症状がでる更年期症状を緩和させる作用があるので、年齢と共に意識的に摂取を心掛けましょう。
▼カルシウム
精神安定剤とよばれるほど、神経に関係があり、神経の異常興奮を抑える働きがあります。
不足すると、イライラ、肩こりなど精神が乱れる症状が出ます。成長期の子供、妊婦、授乳婦はもちろんのこと、更年期の女性、高齢者は積極的に摂取するように心がけましょう。
カルシウムの摂取率は、食品によって変わります。一般的に、乳製品は50%、小魚は30%、緑黄色野菜は20%程度とされています。吸収率を高めるには、アミノ酸のアルギニンやビタミンD、クエン酸と一緒に摂ると良いといわれています。野菜から摂るときは、クエン酸とアルギニンを含む黒酢をドレッシングにして、おいしくカルシウムの吸収を高めましょう。
▼マグネシウム
欠乏すると、興奮し、喧嘩しやすくなる傾向があります。インスタント食品、肉加工品などの食品に使われている添加物のリン酸は、カルシウムやマグネシウムの吸収を阻害することで知られています。
▼マンガン
マンガンは、神経の刺激伝達に関わるミネラルです。動物実験では、欠乏させた動物は、子育てをしなくなるというデータがあります。動物性食品より植物性食品に多く含まれています。
▼鉄
鉄欠乏になると、貧血やめまいの他に、細胞に十分な酸素が運ばれなくなるため、無気力、うつなど精神症状も出ることがあります。
▼亜鉛
偏食や加工食品を多く食べると、亜鉛不足になることがあります。亜鉛が不足すると、味覚障害、食欲低下、抜け毛などがおこります。また、亜鉛は、血糖値降下作用のホルモン、インスリンの生成には欠かせません。
■食生活、大丈夫ですか?
清涼飲料水をよく飲む人、インスタントラーメン、肉の加工食品、ファストフード、チョコレートなどの甘い甘い菓子を日常的に食べる人、アルコールを飲む人は、ビタミン、ミネラルを消費しますので、ビタミンやミネラルを積極的に摂るようし、食生活の見直しも行いましょう。
▼パート4(「心の病」予防のポイント)に続く...



