
健康情報小ネタ集
肝腎要の腎臓病対策 Part-1 (健康医学季刊誌 展望「33号」より抜粋)
以前「肝腎(肝心)要の肝臓病対策」特集をしましたが、今回は腎臓病対策です。肝臓と共に「要」と言われるほど人体にとって重要な働きをする腎臓。肝臓と腎臓には「消化器」と「泌尿器」という相異なる特徴があるにも関わらず、共通した特徴もみられ、病気の症状がよく似ているのです。
例えば、肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように、肝臓病の初期には目立った症状をほとんど感じることがありません。多くは疲れるとか、だるい、食欲がない、めまいがするなどの不定愁訴といわれる症状です。
●腎臓の働き
腎臓病にも似た症状がみられます。そのために症状に変化に気づくことが遅くなる傾向があります。症状は慢性化しがちで、治療にも時間がかかります。知らない間に症状が進行して、腎不全という重篤な疾患に陥る危険性があります。それだけに日頃のチェックが必要となります。
今回の特集の腎臓ですが、腎臓は左右に一つずつあって、一は腹部の奥深く、背柱の両側にあり、大部分が肋骨に隠れています。形は内側の血管や尿管が出入りする部分が凹んでいて、そら豆に似た形をしています。大きさは大人の握りこぶしよりやや小さく、重さは120〜150gくらいです。腎臓は形状的には小さい臓器ですが、私たちが生きていくために重要な働きがあります。
この腎臓の働きが正常時の10%以下になると、末期腎不全という最悪の状態となり、本来ならば体外に排泄される毒素や老廃物、余分な水分が体内に溜まります。これらの物質が取り除かれないと、むくみや高血圧、吐き気、頭痛などの症状が発生し、高度の疲労感や食欲不振、無気力などの症状が進行して、血液透析や腎移植などの治療を受ける必要が出てきます。
それでは、まず腎臓の機能を考えてみましょう。
・体内で主としてタンパク質が代謝されて出来た老廃物を濾過し、必要な成分は再利用して、不用なものは尿として排泄します。
・体内の水分や塩分量を一定に保つ。
・レニンなどのホルモンを分泌して、血圧を調整する。
・ビタミンDを活性化して、骨を丈夫にする。
これらの重要な働きは、いずれも尿をつくることによって行われます。毎日排泄される尿は、これらの排泄や調整作用の結果と言えるのです。
したがって、腎臓の働きが悪くなると尿の排泄も変調をきたし、体の中に溜まった余分な水分を、体の外へ出すことが出来なくなって食欲不振や体調不良の原因になります。また、貧血を起こしたり、骨がもろくなります。
●偉大なリサイクル工場
腎臓には、心臓から送り出された大量の血液が腎動脈を通じて入り込みます。その腎動脈は枝分かれし、毛細血管が絡み合って糸球体となります。そのまわりをボーマン嚢と呼ばれる袋が包んでいます。この糸球体が毛細血管から血漿成分を濾過して原尿をつくり、さらに尿細管を通じて一度は濾過したものの必要な栄養を再吸収し、残った不用なものを尿として排泄します。
この糸球体をと尿細管をまとめてネフロンと言い、腎臓の基本的な単位となっています。ネフロンは片側の腎臓に約120万個、両方で240万個あるといわれ、その数が5分の1以下になると腎不全となります。ネフロンの働きは大変複雑ですが、血漿成分の濾過、必要成分の再吸収、不用物質の排泄が主な働きとなります。
■尿路系の働き
腎臓は尿をつくる大事な器官ですが、その尿を集めて尿管、膀胱、尿道へと排泄する経路を尿路系といいます。尿は杯のような形をした腎杯から腎盂に集められ、尿管に送られます。尿管は腎盂と膀胱をつなぐ長さ20〜30cmの柔らかな管となっています。
尿管は斜めに膀胱に入って、ひだのようになっているので一度膀胱に入った尿は尿管に逆流しない仕組みになっています。尿道では膀胱の筋肉が尿道を取り囲んで、尿が漏れないようになっています。女性の尿道は3〜4cmと短く、男性はその先の陰茎にあわせて前部尿道がつくられています。
●腎臓の体液調整作用
人体は一見すると、骨格や筋肉、脂肪、皮膚で構成されているように思われがちですが、実際はその60%が血液をはじめとする体液から成り立っています。
腎臓はこの体液を常に一定の状態に保ち、60兆を超える全身の細胞の働きを助ける仕事を巧みにこなすとともに、ホルモンの分泌や造血などの働きをしています。その調整についてみてみましょう。
■水分の調整
腎臓は水分の摂取量に応じて尿量を増減することによって、巧みに体内の水分を常に一定に保つ調整をしています。ですので、腎臓の働きが衰えると、この調整の働きが崩れてさまざまな障害が現れてきます。
■老廃物の排泄
腎臓には体内で行われた代謝作用によって残された老廃物、特にタンパク質から発生する有害な窒素酸化物などを無害な尿素や尿酸などに変えて排泄する大切な働きがあります。腎不全では、この働きが作用しなくなります。
■電解質の調節
腎臓は体内のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、あるいは炭酸、硫酸イオンなどの電解質(体液の中で分離してイオンとなるもの)の濃度を一定に保つために、過剰なときは尿中の濃度を増やしたり、逆に不足するときは体内に再吸収するようにします。
■浸透圧の調整
体液には血液のように細胞の外に流れている細胞外体液(体液の3分の1)と、細胞の中に含まれる細胞内液(体液の3分の2)があります。ナトリウムは細胞外液の、カリウムは細胞内液の大部分を占めています。
人間を含め、生体では電解質濃度を正しく保つことは命に関わる非常に大切なことです。なぜなら、血管で運ばれる栄養分を細胞に運び、その排泄物を再び血管に戻す原動力となるのが浸透圧だからです。
■酸・アルカリの調節
体内の血液はpH7.4という弱アルカリの状態に調整されていますが、腎臓は体内の酸が多ければ尿の酸性を強め、アルカリが強ければ尿をアルカリ性に保つよう、常に一定に調整しています。
体内の酸としては、硫酸やリン酸などの酸が腎臓から排泄されています。これらは主にタンパク質に含まれる硫黄やリンが体内で燃えたときに発生します。1日あたりの発生量はおよそ5〜10gですが、腎臓の働きが低下すると、これらの排泄が不十分となり、pHが酸性に傾いてアシドーシス(体液が過度に酸性化した状態)となります。
■ホルモン分泌作用
腎臓には尿の排泄や体液の調整作用の他に、血圧を上昇させるレニンや貧血を防ぐ造血ホルモンをつくる作用もあります。人工透析では、ここまでの代行は不可能です。
■血圧上昇作用
レニンは血圧が低下して腎臓への血液量が減少すると、血管を収縮させて血圧を上昇させる働きがあります。レニンは血液中のタンパク質の一種であるアンジオテンシンを遊離し、この物質が血管を収縮させて血圧を上げる働きをします。
■造血作用
腎臓は造血作用因子のエリスロポエチンをつくります。この物質は骨髄でつくる赤血球を刺激して造血を働きかけます。腎不全になると、このエリスロポエチンが不足して貧血を招くといわれています。
■ビタミンDの活性化
骨とかかわりの深いビタミンDを活性化する働きがあります。腎不全になると、この力が不足してホネが弱くなる骨軟化症が起こりやすくなります。
Part-2「腎臓の病気とその症状」に続く



