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Part-2に引き続き「腎臓の病気」について解説します。

 

■慢性糸球体肝炎(慢性肝炎)

腎臓の働きは先述のように糸球体を、それにつながる尿細管によって営まれています。糸球体は尿の元になる原尿をつくる毛細血管の塊で、その慢性的な炎症を慢性糸球体肝炎または慢性肝炎といいます。その半数はIgA腎症といわれています。
IgAとは、免疫ブログリン(抗体)Aの略称で、咽喉、気管支、腸などの粘膜を細菌やウイルスなどから守っています。しかし、この障壁が弱いと、粘膜に感染した病原体の一部とIgAが合体し、免疫複合体をつくって腎臓に流れ着きます。
この免疫複合体は腎臓に付着すると、2〜3ヶ月かえてじわじわと炎症をおこし、粘膜から侵入して組織を破壊していきます。このような粘膜感染を繰り返すことで腎臓に障害をおこします。

 

■慢性糸球体肝炎の症状

慢性糸球体肝炎は一般的には発病初期の症状が軽く、急激な症状を呈しないため、発症時期を正確にすることは困難なことが多いものです。
慢性糸球体肝炎の症状で重要なのはタンパク尿、ときには血尿がみられることです。この場合も自覚症状はほとんどありませんが、タンパク尿の排泄が大量になると下肢と顔面に浮腫ができることがあります。また、高血圧症状を見ることもあります。以下に3つのタイプを紹介します。慢性腎炎の分類

1.固定型慢性糸球体肝炎

このタイプの場合、タンパク尿は1日あたり1.0g以下の少量で、顕微鏡で観察しても、わずかな赤血球以外には異常が認められず腎機能も正常か軽い程度の低下にとどまっています。一般に、この腎炎の進行は穏やかなのが特徴です。

2.高血圧型慢性糸球体肝炎

高血圧症状を呈するタイプです。この場合、腎炎がある程度進行していると考えられます。血圧の上昇が顕著な場合は、降圧剤を使用して血圧を管理します。

3.ネフローゼ型慢性糸球体肝炎

タンパク尿が高度で、血清タンパクが低下して浮腫を生じます。

 

■慢性糸球体肝炎の経過

慢性糸球体肝炎の経過は、腎機能の面から3つの期間に分けられます。

1.初期
タンパク尿、時には血尿が見られますが腎機能は正常です。この時期には全身の倦怠感や食欲不振などの症状はみられません。もしも倦怠感や食欲不振などの症状があれば、別の病気との合併症、もしくは膠原病や糖尿病などの病気に伴う腎障害が考えられます。
また、先述のIgA腎症のように免疫グロブリンが糸球体に沈着する腎炎は、一般的には予後は良好であるにも関わらず、肉眼的血尿が持続的に見られるケースがあります。しかし、そのために血液が尿路に詰まって無尿になったり、貧血を起こすことはないとされています。

2.中期
軽度ないし中等度の腎機能の低下が見られる時期で、高血圧および浮腫が見られることがあります。特に、尿中に血液中のタンパク質が大量に漏れ出てしまうネフローゼ症候群では、全身的な浮腫が現れます。
腎機能の指標とされるクレアチニンクリアランスでみると、それは30〜80ml/分程度に低下します。しかし、末期とは異なり、尿毒症症状のような腎機能低下の症状はほとんどありません。したがって、この時期をいかに持続させるかが重要です。そのためにも、日常生活の節制や治療が大きなカギとなります。

3.末期
透析療法が必要となる、あるいはその直前の時期です。この時期は腎機能の低下による貧血、高血圧、浮腫および心不全などの尿毒症症状が現れます。
この時期は、食事療法や薬物療法により、尿毒症症状を軽減する治療が行われますが、患者自身の生命維持が不可能な状態になると透析療法が行われます。

 

■検査と診断法

慢性糸球体肝炎の初期は腎機能が正常ですから、浮腫をおこしたり、食欲不振になるなどの全身症状はほとんどありません。たまたま職場や学校の定期検診などでタンパク尿や血尿を指摘され、その後の精密検査で慢性糸球体肝炎と診断されるのが普通です。
下図は慢性糸球体肝炎が疑われたときに行う検査項目です。継続するタンパク尿、血清クレアチニンクリアランスの低下、尿沈査所見などで慢性糸球体腎炎を強く疑われる所見が認められれば、早急に腎生検を行って診断を確定する必要があります。慢性腎炎の診断
血尿は慢性糸球体腎炎の重要な症状ですが、血尿のみでタンパク尿が認められない場合は、慢性糸球体腎炎ではない場合もあります。というのも、血尿は腎尿路系の感染症や浮腫でもみられるからです。タンパク尿は、発熱時や運動後、起立性のタンパク尿が検出されるものもありますから、それだけでは慢性糸球体腎炎の症状とは限りません。
また、タンパク尿が陽性であっても、検査を繰り返すうちに陰性となるときや、早朝の起床時に尿が陰性であれば、慢性糸球体腎炎などの病的なタンパク尿とはいえません。

 

■治療と療養

慢性糸球体腎炎の治療は食事療法、安静療法、及び薬物療法、更に末期腎不全患者に対する透析療法が中心になります。これらの治療法は、それぞれの病気の時期や病状に応じて、適宜に組み立てて行います。

1.初期
初期はタンパク尿または血尿のみで、自覚症状は全くないため、安静や薬物療法は必要ありません。高血圧があれば、1日あたり7〜10g程度の食塩制限(日本人の平均的な塩分摂取量は1日あたり12g前後)をします。
激しいスポーツは、たとえ短時間であっても腎臓に悪影響を与えるので慎むべきです。
また、初期からすでにタンパク尿がはっきりした陽性の場合、浮腫や高血圧を呈するものは、軽い運動でも避けた方が安全です。

2.中期
この時期は、治療は慎重かつ積極的に行う必要があります。特に末期の腎不全では透析療法が必要になるので、そこまで至らないための努力が求められます。
また、この時期に腎機能が正常の半分以下になってしまうと、タンパク質の摂りすぎは病気に悪影響を与えます。健康な大人は体重1kgあたり1.2〜1.5g(体重60kgの人であれば72〜90g)のタンパク質を摂取していますが、腎機能の低下とともに、1.5〜1.0g(約40〜60%)に減らす必要があります。
さらに、尿量の少ない腎不全状態では体内に老廃物が溜まりやすいので、飲み水を多くして尿量を増やすようにします。
この時期の薬物治療はタンパク尿や血尿の減少を目的として、抗血小板薬や抗凝固剤などが使われます。またネフローゼ症候群では、副腎皮質ホルモン剤や免疫抑制剤に高い効果が認められています。高血圧症状を伴うときは、血圧上昇による二次的な腎障害を避けるために降圧剤を使用する必要もあります。
食事療法もまた、薬物療法や透析療法と共に大切な治療法の一つです。とりわけ近年は、タンパク質をはじめ各種栄養素の腎臓への影響について理解が深まり、医師と栄養士の協力のもとに病態に合わせた食事指導も積極的に実施されています。そのポイントは、食塩、タンパク質、水分、ミネラルのコントロールにあります。

3.安定期
この時期は腎機能は正常、血圧も正常で浮腫もなく、自覚症状もない安定した時期です。原則的には食事制限の必要はありません。

4.進行期
この時期は最も注意が必要となります。このとき、軽度の腎機能障害以外に症状がなければ、食塩は1日あたり7〜10g、またタンパク質は過剰にならないようにします。特に高血圧や浮腫があるときには、食塩は1日あたり7g程度に制限する必要があります。水分も、浮腫の程度に応じて制限します。
日本人は今グルメ・大食ブームもあって、高タンパクの摂取に偏りつつあります。しかし、この時期の低タンパク食ではタンパク質を30%以上減らし、40〜50g程度に減らす必要があります。参考までに、カツ丼の1人前は30gのタンパク質を含んでいます。
タンパク質の制限は、クレアチニンクリアランスが正常値のおよそ半分となる50ml/分となった時期を境に厳しくなります。
何故タンパク質を厳しく制限するのでしょうか?三大栄養素といわれる糖質、脂肪はエネルギーとして燃やされると、二酸化炭素と水となって排泄されます。しかしタンパク質は分解されるとほとんどが人体に有害な窒素化合物となり、それは尿中にしか排泄されません。したがって、タンパク質を多く摂取すると腎臓に負担をかけることになり、さらに糸球体や尿細管などを自滅させて尿をつくることができなくなるのです。
ネフローゼ症候群の場合は血液中のタンパク質が少なく、浮腫が多くなります。そのため、食塩及びタンパク質の制限が強化されます浮腫が強いときは水分も制限されます。

5.末期
腎臓の機能障害が高度の場合は、透析療法への導入を少しでも遅くするため、さらに厳しい食事制限を必要とします。タンパク質は体重1kgあたり1kgあたり0.5〜1.0gに減らします。これは、高窒素血症や酸血症を軽減するためです。塩分制限は1日あたり5g以下にすることもありますが、正確には患者1日あたりの最大尿中ナトリウム排泄量を測定して参考にします。
水分の制限は多量の利尿剤を使用しても尿量が少なく、心不全状態をきたす場合には必要となります。しかし、一般に慢性糸球体腎炎の進行期や末期には多尿になるので、十分に水分を摂る必要があります。
また、この時期は酸血症のために血液中のカリウムが常に上昇する傾向があり、心筋炎などの障害をおこすことがあります。したがって、カリウムを多く含んだ生野菜や果物などの摂りすぎにも注意しなければなりません。
この様な厳しい食事制限をすると、エネルギー摂取の低下がみられるので、カロリーは糖質を中心に十分摂取(1日あたり1800〜2000キロカロリー)する必要がありますが、糖類のみでの摂取では弊害も考慮しなければなりません。骨粗鬆症にもなりやすいので、カルシウムとマグネシウムも多めに摂取する事が必要です。

 

■腎不全・尿毒症

腎機能が健康な人の30〜40%以下に低下してくると、血液中にタンパク質の老廃物である尿素、クレアチニン、尿酸などが正常濃度以上にたまってきます。それと同時に、血液中のナトリウム、カルシウム、カリウム、リンなどの電解質の組成も乱れて血液は酸性に傾きます。
このような腎臓の機能低下が急激もしくは緩やかにおこり、もはや健康な人と同じ血液組成が保てなくなった状態を腎不全といいます。急性か慢性かの鑑別は、数ヶ月から1,2年間の夜間尿の習慣があるかどうかを問診して診断します。
また、尿毒症とは、血中クレアチニンが約7.0〜8.0mg/デシリットル以上に上昇し、さらに意識障害、心不全、呼吸困難、下血、けいれん、昏睡などの重篤で、生命に危険な症状が現れた状態をいいます。

 

■急性腎不全

健全な腎臓であったにもかかわらず、何らかの原因で腎臓の働きが急速に衰えて尿量が1日あたり400ml以下と大幅に減少し、重篤な尿毒症の症状が現れた状態です。ときには、尿量が減少しない場合もあります。また、小児に症状が現れる事が多く、90%は治癒しますが、ごく一部に利尿がみられないことがあり、透析療法が必要となります。
この病気は一般に進行性で、死に至る(救命率は約50%)こともあり、入院精密治療が必要です。治療が適切ならば、後遺症を残さず治癒することもあります。
急性腎不全の原因は次の3つに区分されています。

1.腎前性急性腎不全
大出血、脱水、血圧低下、血栓形成、溶血などが原因で、腎臓への血流が急激に減少したときにおこります。特に、高齢者の方は若年者に比べて腎機能が低下しており、体の水分が不足しているので出血、脱水などによる急性腎不全の頻度が高くなります。
治療と並行して、精密検査による予防に努めます。循環血液量、輸液、強心剤の投与が行われます。また、水、電解質、栄養の管理がさなれ、これで効果があれば乏尿から多尿に移ります。
しかし、一時的に尿量が得られても、原因となった病気や合併症の軽重、年齢、黄疸の程度などが予後に影響するので楽観は出来ません。

2.腎性急性腎不全
主に腎機能を急速に破壊する急性糸球体腎炎、溶血性尿毒症、悪性高血圧、膠原病などが原因となり、腎臓そのものが病変を呈して乏尿に陥った状態です。急性糸球体腎炎は小児に多くみられ、90%は治癒しますが、ごく一部に利尿がみられないことがあり、透析療法が必要となります。
腎臓に害をおよぼす毒性物質が原因となる場合もあります。その物質は腎毒性物質と呼ばれ、尿細管の変性、壊死などにより乏尿を招きます。水銀、ヒ素、鉛、カドミウムなどの重金属、クロロホルム、クレゾール、トルエンなどの化学物質、カナマイシン、ストレプトマイシンなどの医療品などが挙げられます。
治療法としては、まずは原因となる物質との接触を断つことです。次に輸液、利尿剤などを投与し、利尿がみられない場合は人工透析または血漿交換療法に頼ります。

3.腎後性急性腎不全
この症状では、左右の尿管、膀胱、前立腺、尿道などの腎臓より下部の組織に結石や悪性腫瘍などができ、それによって尿路が閉塞されて無尿となります。
治療には膀胱カテーテル、尿管カテーテルの挿入、または手術などの泌尿器科の処置が必要です。

 

■慢性腎不全

これまでの慢性腎炎が次第に進行して腎機能が低下し、十分に老廃物が排泄できなくなった状態をいいます。
慢性腎不全となる病気は、我が国では圧倒的に慢性腎炎が多く、糖尿病性腎症、慢性腎孟腎炎、多発性囊胞腎、腎硬化症などがその他を占めます。
診断は簡単で、採血して血中のクレアチニンが2.0mg/デシリットルを維持していれば慢性腎不全と診断できます。
この病気は進行性で、予後不良であり、残念ながらいまのところ進行を阻止する方法は確立されておりません。

 

■慢性腎不全の症状

腎臓が疲弊すると、多くの臓器に影響が出てきます。一般的な症状としては疲れやすい、頭重感、かゆみ、夜尿症などが挙げられます。
その中で夜尿症は必ず現れる重要な症状です。腎臓が萎縮すると番茶のような濃い色の尿がつくれなくなり、薄いレモン色または無色の尿を多量に排泄します。そのために口は渇き、多飲多尿となります。そのため、就眠前に排尿しても、深夜には毎晩尿意で目覚め、トイレで多量の色の薄い尿を排泄します。

 

■各組織への影響

1.中枢神経系
頭痛や集中力、計算能力、記銘力の減退、幻視、幻聴、痴呆、脳血管障害、視力障害、昏睡、けいれんなど。

2.末梢神経系
下肢のこむらがえり、震え、しびれなど。

3.循環器・呼吸器系
動悸、息切れ、高血圧、低血圧、不整脈、心不全、肺浮腫など。

4.消化器系への症状
食欲不振、やせ、悪心、嘔吐、下痢、吐血、下血など。

5.造血系への症状
貧血、失血など。

 

■生活と食事

慢性腎不全の場合はやがて人工腎臓が必要になりますが、それによって生命が保証されるものではありません。したがって、生活設計や食事を厳しく管理し、できる限り透析の導入を遅らせることが必要です。
残念なことに、我が国では腎不全食について、魚は牛、豚が悪く、鶏のささ身だけがよい、酒や香辛料は禁止など、さまざまな伝説が広がっています。これらはいずれも根拠がありません。香辛料や食酢を十分活用して下さい。ただし、カリウムは生野菜、果物、すし、刺身、煎じ薬に多く含まれているので避けて下さい。カリウムの多量摂取は高カリウム血症につながり、悪心、嘔吐、腹痛、脱力感をおこし、不整脈、心停止に至ります。
また、食塩の多量摂取は浮腫、高血圧、心不全につながるので危険です。しかし、その一方で食塩制限を厳しくしすぎると、血圧低下、食欲不振、悪心、嘔吐、意識消失、痙攣発作をおこすことがあります。
慢性腎不全患者の方は、病気の性質上、スポーツや妊娠、過労、カゼを避けるように努めてください。仕事を続けるのであれば、疲労の少ないマイカー通勤や定時間のデスクワークにとどめてください。

 

Part-4「腎臓の病気とその症状、その3」に続く