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アトピー性皮膚炎 Part-1 (健康医学季刊誌 展望「34号」より抜粋)

近年、アトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などのアレルギー反応が原因で起こる疾患が著しく増加しています。近年の調査では、3人に1人が何らかのアレルギー疾患を持っているとも言われています。

 

●アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎とはどのような病気であるのか、現在、明確な定義づけはされておりませんが、1995年に日本皮膚科学会では、アトピー性皮膚炎とは「改善と悪化を繰り返す、痒みをともなう湿疹を主要な病変とする皮膚疾患で、患者の多くはアトピー要因を持つ」としています。
湿疹とは、痒みや皮膚の発赤(紅斑)、細かいブツブツ(丘疹)、カサカサと皮膚がむける(鱗屑)、皮が厚くなる、かさぶたが出来る、などが皮膚に現れる病的な変化です。
アトピー性皮膚炎では、湿疹が現れる部位にも特徴があります。目の周り、口の周り、唇、耳たぶ、頬、額などの顔や、膝や肘などの手足の関節、胴体などに左右対称に分布します。また、発疹の部位も年齢によって変わります。
また、アトピー性皮膚炎の患者の多くは、体質的に特有のアトピー要因を持っています。気管支喘息やアレルギー性鼻炎、結膜炎などの病気があるが、家族にそれらの病気にかかったIgE抗体の持ち主がいます。
この様なアトピー要因を持つ人が、何らかの機会に抗原(アレルギーを起こす原因)に接触したり、食べたりすると、体内に抗体が造られます。これがIgE抗体です。そして同じ抗体に再び接触したり食べたりすると、抗原と抗体が結合して過敏反応を生じ、アレルギーが起こるわけです。

 

●治療法をめぐる混乱

アトピー性皮膚炎は、1960年にアメリカのザルツバーガーという医師が日本に初めて紹介した病気で、それまで日本ではあまり問題にされていませんでした。現在でも治療の基準がはっきりせず、学会でも統一されていないようです。
このことには、医師の間でも混乱があるようです。アトピー性皮膚炎はすべて食事由来のアレルギーだから、タンパク質をすべて除去することから治療を始めるという医師がいる一方、その除去はごく限られた重症の患者に限定し、しかも出来るだけ短い期間にとどめるべきだと指導し、成功していると主張する医師も少なくありません。
また、アトピー性皮膚炎は大きくなれば治るもので、対処療法としてステロイドホルモンの外用剤(軟膏、クリームなど)を塗っていれば良いという医師もいます。医師の間でも解釈や治療の違いがありますから、患者にとっては、通う病院によって治療法が異なり、混乱に陥るのは当然と言えます。
1990年の小児科学会で、アトピー性皮膚炎と食事アレルギーのシンポジウムが開催されました。
このとき、生後3ヶ月の母乳栄養乳児の母親に厳格な食事療法を行った結果、母親の体重減少と乳児の成長障害、知的発育障害をきたしたとの症例報告があり、センセーションを巻き起こしたことがあります。
アトピー性皮膚炎の治療のために、大事な乳児に知能や成長に障害をきたすことが、果たして患者にとって良かったのか疑問です。この患者は幸い、早めに治療を中止して成長障害は治ったそうです。
ある皮膚科医師の報告によると、アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関係している頻度は、乳幼児患者の20〜30%にとどまるといわれます。さらに、その頻度は年齢が長じるにしたがって減少傾向にあります。
そのため、食事制限はむやみに行うべきではなく、患者の全身状態をチェックしながら、慎重に行うべきものと考えられます。
アトピー性皮膚炎の治療薬には現在、ステロイドホルモンの軟膏が中心となっていますが、この薬は使い方によっては、ホルモンによる副作用が現れることが知られています。また、塗る部位によって、副作用の程度や効果が異なると指摘されています。
最近では、ステロイド軟膏に替わる、副作用の少ないプロトピック軟膏の使用が広がっていると言われています。

 

●増える成人の発症

アトピー性皮膚炎と言えば、昔は小学校を卒業するころには自然に治ってしまう子供の病気と考えられてきました。それが最近では、高校生や大学生、さらには社会人などの成人患者が増えています。しかも、成人後に発症すると、治りにくいのが特徴です。
これには、乳幼児期に発病してから徐々に悪化していった人もあれば、子供の頃は何ともなかったのに、成人後に突然発病した人など様々です。その原因を調べてみると、職場などの対人関係による精神的なストレスや緊張などが大きな原因となっていることがわかります。
ストレスの原因はさまざまですが、ストレスが加わると、それに対応してホルモンが分泌され、アレルギー反応が起こりやすくなるとの研究も報告されています。
ストレスによって分泌されたホルモンの働きにより、体の中で造られたIgE抗体と肥満細胞(マスト細胞)が結合し、その刺激によって肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質が細胞の外に放出されます。
その結果、周囲の血管を拡張させて発赤を起こしたり、血管から血漿が漏れ出て皮膚にジンマシンを起こしたり、かゆみをもたらしたりします。加えて、ストレスでイライラして、湿疹の部分をかきむしり、炎症をさらに悪化させる悪循環を招きます。したがって、アトピー性皮膚炎の人は、ストレスをためないように心がける事が大事です。
成人の発症が増えている理由は複雑で、まだ完全には解明されていません。しかし、次のような原因が考えられています。

1.思春期から発病する女性には、生理(妊娠・出産を含む)が関係している。
2.最近の食生活の変化、特にリノール酸を含んだ、植物性油の多用や食品添加物などが皮膚を弱くさせている。
3.ストレス(進学、就職、結婚など)
4.家屋の高気密化による家ダニの繁殖

等々、様々な要因が考えられるアトピー性皮膚炎に関しては、今後も原因や治療法の研究が続けられると思います。

 

次回Part-2では、アトピー性皮膚炎の特徴について解説します。