
健康情報小ネタ集
アトピー性皮膚炎 Part-4 (健康医学季刊誌 展望「34号」より抜粋)
Part-3までは「アトピー性皮膚炎」についての基本を解説して来ました。今回からは、実際のアトピー性皮膚炎の治療法ついて考えていきます。
アトピー性皮膚炎は長期間の治療を必要とする病気です。したがって、まずアトピー性皮膚炎の原因や症状を悪化させる食べ物や環境、細菌、衣類その他の接触抗原、さらにはストレスなどの誘発因子を突き止め、年齢に合わせて除去することが必要です。
また、薬物療法では、現在のところステロイドによる療法が中心となっていますが、プロトピックと呼ばれる塗り薬も使われるようになっています。
●悪化要因の追求と除去
乳幼児期では食べ物がアトピー性皮膚炎の悪化要因となることが少なくありません。また、乳幼児期を過ぎると、ダニ、ハウスダスト、カビなどの生活環境上の要因がアレルゲンとなりやすくなります。
特に、最近の住宅はサッシなどで昔の木造住宅に比べ、格段に気密性が高くなっています。
そのため、冬の暖房や夏の冷房などの効果は良くなったものの、通気性が乏しく、湿度が高くなりがちです。それがダニを増やす原因ともなっています。
このような生活環境上の要因は、日常生活の中で、換気や清掃などの工夫や努力によって、かなり減らすことが出来ます。ダニはホコリを餌にして繁殖します。
ですから、普段からこまめに掃除を心がけ、室内を清潔に保つことが大事です。特に寝室の掃除や換気は念入りに、また寝具のダニ対策も試みて下さい。
●食事除去療法の功罪
アトピー性皮膚炎の原因の一つに食事アレルギーがあります。特に乳児期に多いようです。しかし、その頻度は20〜30%といわれ、すべての乳児にあてはまるものではありません。アトピー性皮膚炎だからといって、慎重に調べもせず卵や牛乳をストップすることは問題です。
特に乳幼児のような成長期には、卵、牛乳、大豆、米、小麦などを簡単に除去することは好ましいことではありません。厳格な食事除去療法は、かえって成長障害や精神発達の遅れを招くとの報告もあります。
本当に初期食事除去療法が必要なのかどうか、専門医とよく相談して下さい。
食事除去療法を行う基準としては...
1.原因抗原がアレルギー検査や誘発・除去検査ではっきりしていること。
2.原因抗原が特定の食べ物に限定されていること。
3.他の魚介類や植物性タンパク質など、食べ物で補えること。
4.一日でも早く除去食を中止できるようにするため、定期的に食事の内容をチェックすること。
などがあります。
そのためには育児にたずさわる親が、食事内容を症状の変化を記す日記を書き、受診時に主治医に見せることをお勧めします。
なお、除去・誘発試験は以下の方法で行います。
まず、疑わしい食べ物を二週間食べないようにします。二週間後に患者の症状(A.良くなった、B.少し良くなった、C.変わらない)を調べます。さらに食事中にアレルギーの軽いものを二週間食べます。その結果(A.悪化した、B.少し悪化した、C.変わらない)を調べます。
このテストの結果、除去・誘発テストともAあるいはBとなった患者には6ヶ月間除去します。なお、Cの場合は中程度から強度と2週間毎に増やします。それで特に異常がなければ、特に制限する必要はありません。詳しくは専門家にご相談下さい。
●妊婦の食事制限は必要か
食事制限で問題になるのは、妊婦の場合です。妊婦がアトピー性皮膚炎患者である場合、生まれた赤ちゃんに母親のアトピー素因が遺伝し、食事アレルギーを起こす恐れがあります。そのために、妊娠中から卵や牛乳、大豆などの、アレルギーを起こしやすい食べ物をさせるという考え方もあります。
しかし、すべてのアトピー素因が赤ちゃんに遺伝するとは限りませんし、赤ちゃんが必ずアトピー性皮膚炎になるとも限りません。むしろ、そのような心配をして食事制限するよりも、赤ちゃんの発育に必要な栄養はしっかり摂り、丈夫な赤ちゃんを産むことが大切です。
食事制限はその妨げとなりますから、ご自身のアトピー性皮膚炎をしっかりケアしながら、大事な栄養は遠慮せずに摂取する事をお勧めします。
●薬物療法は塗り薬が主体
■ステロイド軟膏
ステロイド軟膏は、これまで最も有力なアトピー性皮膚炎治療薬として使用されてきました。
ステロイドは本来、腎臓の上に帽子のように被さっている副腎から分泌される重要なホルモンの一つで、体内で起こる炎症を軽くする働きがあります。
ステロイド軟膏はこの副腎皮質ホルモンの代用をする薬で、体内で分泌するホルモンでは抑えきれない炎症を、外から抑える働きをします。
しかし、ステロイド軟膏は飲み薬や注射薬のような血液を通じた副作用ほどではありませんが、全身に皮膚の萎縮や血管の拡張による発赤など、頻度は少ないものの、副作用の起こる可能性は残っています。
■気になる副作用
ステロイド軟膏には、ホルモン作用として、以下のような直接皮膚に影響する副作用があります。
1.軟膏を塗った部分に毛が増える。
2.血管が拡張して皮膚が赤くなる。
3.ニキビが出来る。
4.既にある細菌感染が悪化する。
5.水虫が悪化する。
6.ヘルペスウイルス感染症が悪化する。
7.水いぼが増える。
ただし、このような皮膚の副作用は、症状がおさまって薬を塗らなくなると、通常数ヶ月から1件ほどで徐々に回復します。
いずれにしても、ステロイド軟膏はアトピー性皮膚炎を根本から治す薬ではなく、一時的に症状を抑える薬であることを念頭におきべきです。
ステロイド軟膏を使用すると、真っ赤にただれた皮膚症状が2,3日でおさまるのは、ステロイド軟膏に炎症を鎮める強い働きがあるためで、完全に治ったのではありません。そこを間違ってはいけません。
元々、皮膚に発赤やかゆみ、湿疹などの炎症が起きるのは、皮膚の自然な治療反応の現れと見るべきなのです。
皮膚は炎症を起こすことで症状を体の外に押し出し、元の健康な肌に戻そうとします。ですから、炎症が自然に治まるのを待つことが皮膚にとっては最もありがたい治療法です。
それをステロイド軟膏のような強い薬で無理に抑えようとするわけですから、長く使い続ければ元々の自然治癒力をさらに弱らせて、回復を遅らせる悪循環を招きます。
しかし、発症してしまった湿疹を放っておくことも出来ません。懸命な治療は、ステロイド軟膏のような強い薬を使うのは必要なときに限り、効いた時点で使用を止めることです。
■プロトピック軟膏
プロトピック軟膏は、1999年に健康保険に収載された日本で新しく開発されたアトピー性皮膚炎の治療薬です。アトピー性皮膚炎の治療は、ステロイド軟膏が主流の時代から、ステロイド軟膏と新薬のプロトピック軟膏との併用の時代に入りつあるようです。
プロトピック軟膏はステロイド軟膏とは全く異なる成分を持つため、これまでのステロイド軟膏の欠点を補う、新たな治療の選択肢として期待されています。ステロイド軟膏のように、皮膚の萎縮作用や血管の拡張作用のようなホルモンの働きによる副作用がないのが特徴とされています。
そのため、ステロイド軟膏では副作用が現れやすい首などの部位に長期にわたって使用する上で、大きな利点があります。
アトピー性皮膚炎の症状や悪化のパターンに個人差があるように、ステロイド軟膏とプロトピック軟膏の使い方も患者により様々です。プロトピック軟膏を一年間使用し、その有効率や副作用を検討したところ、ステロイド軟膏のホルモン副作用から回復したとの報告もあります。
■プロトピック軟膏の副作用
1.皮膚に対する刺激感
プロトピック軟膏を塗った後には、ほてり感やヒリヒリ感、灼熱感などの刺激が60〜70%の患者に見られます。これは皮膚の吸収を良くするために軟膏剤に工夫がしてあるからです。このために薬が皮膚を通過するとき、ヒリヒリするように感じます。
しかし、この刺激感は発疹が改善するにしたがって、急速に感じなくなると言います。
2.感染症への副作用
免疫力を抑える働きがあるプロトピック軟膏にも、
・既にある細菌感染の悪化
・水虫の悪化
・ヘルペスウイルス感染症の悪化
といったステロイド軟膏と似た症状が現れることがありますので注意して下さい。
今後はプロトピック軟膏の長期的な副作用も含めて、その有効性や使い方の工夫が検討され、アトピー性皮膚炎のより良い治療法が確立されて行くことが期待されます。
●飲み薬
抗ヒスタミン薬と抗アレルギー薬があります。使い方は、皮膚の痒みが強いとき、必要に応じて使います。
また、痒みの程度によって数種類を使用することがあります。
次回Part-5では、アトピー性皮膚炎の予防法について解説します。



