
健康情報小ネタ集
アトピー性皮膚炎 Part-5 (健康医学季刊誌 展望「34号」より抜粋)
Part-4では「アトピー性皮膚炎」の治療を解説しました。今回はアトピー性皮膚炎の予防についてご紹介致します。
●食生活の改善
急増するアトピー性皮膚炎の原因の一つに、食生活の変化が大きく関係していると指摘されています。特に、昭和40年代から食品添加物が多用されるようになったこと、また卵、牛乳、豚肉などの動物性タンパク質を多く摂るようになったことがアトピー性皮膚炎の多発と関係があるというものです。
これらの食生活の変化の一つに、脂肪分の摂りすぎがあります。特に、最近問題になっているのはリノール酸の摂りすぎです。私たちの食事では、脂肪分は主に次の三つから摂られています。
1.動物性脂肪(肉、卵、牛乳など)
2.植物性脂肪(紅花油、コーン油、月見草油などのリノール酸系油)
3.魚介類の脂肪(イワシ、サンマ等)、シソ油などのαリノレン酸系油
このうち、これまでリノール酸はコレステロールを下げる作用があると言われ、健康食品として紅花油が市場に出回っています。
家庭の料理が炒め物や揚げ物が中心になりました。さらに、スナック菓子やハンバーガー、フライドチキン等のファストフードが増え、植物油の使用が急激に増加しており、リノール酸の摂取量はαリノレン酸の6倍以上にもなっています。
しかし最近では、リノール酸の摂りすぎが原因と見られる病気がいくつか報告されるようになっています。動物実験でも、リノール酸の多い食事を続けると、アレルギー疾患が起こりやすくなるという報告が出ています。
その理由としては、リノール酸は体内で代謝されて、ロイコトリエンの4系列になります。ロイコトリエンの4系列はアレルギー反応の場で悪い結果、特に皮膚に湿疹を起こしやすくするのです。
リノール酸を中心にした食事を与えたネズミと、αリノレン酸を中心とした食事を与えたネズミとの比較では、記憶力や学習能力に明らかな差が出るという報告も見られます。
また、αリノレン酸の豊富な食事を与えると皮膚がキレイになり、アレルギー疾患も減少したとのことです。
αリノレン酸は、体内で代謝されてEPA(エイコサペンタイン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)になります。これらの中でも、DHAは胎児や新生児の脳細胞の発達には欠かせないもので、老人のボケ予防効果もあることがわかってきました。
しかし、リノール酸がすべて悪いわけではありません。αリノレン酸をより多く摂るようにするとともに、リノール酸との比率を1対1にする必要があると指摘されています。
これらの効果から、現在の食生活、特にαリノレン酸を重視した脂肪分を摂るようにすることが、アトピー性皮膚炎対策としても重要と思われます。
そこで、αリノレン酸を増やす食事を以下に紹介しましょう。
1.揚げ物、炒め物を減らし、蒸す、焼く、煮る料理を増やす。
2.イワシ、鯖、サンマなどの魚を多く摂る。ただし、干物は油が酸化する恐れがある(過酸化脂質が問題になる)ので、新鮮生のもをお勧めする。
3.シソ油、えごま油などのαリノレン酸の多い油を料理に使う(生食で使うこと)。
4.昆布、ひじき、海苔、わかめなどの海草類を毎日の食事にとりいれる。
●合併症の予防と治療
アトピー性皮膚炎には、喘息や鼻炎などのアレルギー疾患や、皮膚の感染症、目の病気などの合併症があります。
この中で特に注意が必要な合併症は、目の周りの湿疹を引っ掻くとから起こる、白内障などの目の病気です。
以前は成人のアトピー性皮膚炎にみられる病気とされていましたが、最近では幼児や小児にもみられるようになっています。
目の合併症を防ぐには、目の周りを強く掻いたり、擦ったりして刺激を与えないようにすることです。しかし、最初は症状が現れないので注意が肝要です。
アトピー性皮膚炎との関連で起こる喘息や鼻炎は、アトピー要素が原因ですから、それぞれ専門家のアドバイスを受けながら治療を行う必要があります。
●アトピー性皮膚炎の補助療法
■漢方薬
漢方薬は草根、木皮、果実、種子その他の天然の植物や動物の中から、薬効のある生薬を混ぜ合わせたものです。
近年、東洋医学に対する関心が高まっていますが、その影響もあってアトピー性皮膚炎の患者の中にも漢方薬を利用している人が増えています。
また、皮膚科の治療でも、外用薬と併用して漢方薬を使用している医師もかなり増えています。
漢方薬は副作用が少ないという安心感が一般にあります。その反面、その効果は1日や2日でわかるものではなく、数週間から数ヶ月をみる必要があります。
ですから、外用薬の補助療法と考えて使用するのが無難でしょう。
■民間療法
ステロイド剤が引き起こす副作用の問題から、それに代わる治療法として、選択に困るほど、沢山の民間療法が登場しています。
それらを大きく分けると、アレルギー体質の改善、乾燥肌の改善、皮膚の殺菌、ステロイド軟膏に代わる抗炎症剤などになります。
具体的には、健康医学ではバンキー療法、黒酢、黒酢足湯、黒酢やアセロラエキスなど、他にはアルカリイオン水(飲用外)、浄水器の水、保湿入浴剤、プロポリス、シソエキス、森林浴、その他いろいろあります。
民間療法の特徴はいろいろ言われていますが、何処までアトピー性皮膚炎に効果があるのかは、必ずしも明確ではないものもあります。
十分吟味して自分の肌に合うものを、適宜利用する事をお勧めします。
●心がけたい毎日のスキンケア
アトピー性皮膚炎の患者の肌は、皮膚のバリアー機能が弱いのが特徴です。そのためには、日常のスキンケアが特に重要です。皮膚を常に清潔にし、水分と油分を補給することで皮膚をより良い健康状態に保つ事が出来ます。
■刺激のない入浴を
日本人は入浴が好きな民族と言われるほど、生活習慣の中に入浴をとり入れています。アトピー性皮膚炎でも、皮膚を清潔に保つために毎日入浴したり、シャワーを浴びることは良いことです。
入浴で気をつけることは、汗や汚れは速やかに落とします。しかし、強くはこすらず、ていねいに洗い流しましょう。石けんは弱酸性で、脱脂力の弱いものをお勧めします。シャンプーも同様です。特別に薬用石けんを使用する必要はあまりないでしょう。
ただし、お湯の温度は少しぬるめにし、痒みを感じるほどの高温の湯は避けましょう。また、長湯は避けた方が無難です。
入浴後には、黒酢を適度に薄めた希釈液を塗布する方法も良いでしょう。
■皮膚の保湿に努める
アトピー性皮膚炎の患者は皮膚が異常に乾燥しやすい人が多いので、保湿剤は皮膚の乾燥防止に有効です。
入浴・シャワー後に必要に応じて保湿剤を使用します。軽い皮膚炎は保湿剤だけで改善することがあります。
保湿剤には白色ワセリンや尿素軟膏、ヘパリン類似物質含有軟膏などがよく使われています。これらの薬はステロイドではありません。
この中で最も使われているのが白色ワセリンで、副作用もなく、顔でもどこでも、乳児や成人でも安心して使える軟膏です。ヘパリン類似物質含有軟膏は、名前だけでみると物々しい感じですが、実際は安全で使いやすい保湿剤です。
保湿剤はそれぞれの製品によって保湿効果や塗り心地が違うので、肌質や皮膚の状態にあった、刺激のないものを使い分けすることが重要です。
●その他の注意事項
■日光浴は功罪半ば
太陽の日差しを浴びると、アトピー性皮膚炎が改善すると言われ、日光浴や光線療法も利用されています。
しかし、良い面もある一方で、浴び過ぎはかえって皮膚や脂質を悪化させる恐れがあります。日光浴を行う場合は、晴れた日よりも曇りの日の方が紫外線の害を防ぎ、安全に日光浴が出来ます。時間も、あまり長くならないように注意して下さい。
また、炎症が起きている部分に紫外線があたると、色素が沈着することがあります。特に顔や首には注意が肝要です。紫外線に当たる時間が長く続くと、シミやシワ、皮膚の老化の原因になりかねません。
室内は常に清潔にし、適度の湿度、温度を保つ事を心がけましょう。新しい下着は水洗いしてから着用します。
寝具は、その選び方や手入れが大事です。掛け布団も敷き布団も薄めのものがお勧めです。1年に1度は丸洗いすると良いでしょう。ダニが住みにくくなる防ダニ布団も市販されています。
また、布団から出るホコリを減らす布団カバー(防塵カバー)もあります。防塵カバーは喘息患者用に開発されたものですが、アトピー性皮膚炎患者でも使用できます。
枕もダニの糞が皮膚について湿疹を起こす元になります。ダニの糞は水洗いすると溶けて流れてしまうので、枕は丸洗いできるものを使いたいものです。
爪も短く切り、肌を掻かないように注意します。
次回Part-6では、バンキーなど使ったアトピー性皮膚炎の治療法について解説します。



