
健康情報小ネタ集
酢の成分を化学的に分析するPart-2「玄米黒酢の成分と疲労回復」
(中山貞男医学博士「酢の効用と健康法」より)
●エネルギー生産とTCA回路
人の活動の源となる熱エネルギーは、糖質(炭水化物)、脂肪、タンパク質の3つのエネルギー源の分解により生産される。
エネルギー生産のひとつは、図のとおりTCA回路に集約される経路である。糖質、脂肪、タンパク質のエネルギー源のすべてが、第二段階としてアセチルCoA(活性酢酸)を経由して、第三段階のTCA回路に取り込まれ、ATP(アデノシン三リン酸)とADP(アデノシン二リン酸)の相互変換過程で多量のエネルギーを放出する。
ATPとADPの相互変換を刺激するエネルギー生成系は、TCA回路のほかにクレアチン系(クレアチンリン酸←→クレアチン+リン酸)と乳酸系(グリコーゲン←→乳酸)の2つがある。
TCA回路は、エネルギー源となるあらゆる物質の代謝の最終段階とされており、TCA回路ニ取り込まれた有機酸は、最終産物として水(H2O)と炭酸ガス(CO2)を放出する。
アミノ酸の代謝がアンモニアとクレアチンという害になる物質を生み出したり、脂肪の分解が中性脂肪などのやっかいな生成物を残すのと違って、TCA回路における物質の代謝や分解は、まるで電気自動車のようにクリーンなのである。

●体の疲労とTCA回路
人の活動に直接用いられるエネルギーはATPがADPとリン酸に分かれる時に放出される。ATPの体内貯蔵量はごく少量で、短時間の活動で消費してしまうから、継続した運動をするときにはATPを補給する必要が生じてくる。
ATPを補給する場合には、先述のクレアチン系、乳酸系とTCA回路の3つがある。クレアチン系と乳酸系は酸素を必要としないエネルギー生成系であるが、クレアチン、乳酸という生体にとって有害な物質を生成する。これに対して、酸素を必要とする有酸素系のエネルギー生成系であるTCA回路は、有害物質を作らず、熱効率、エネルギー変換率の優れたATP補給経路である。
疲労は筋肉中への乳酸の蓄積によって起こる。通常の活動ではTCA回路やクレアチン系からのエネルギーでATP補給は間に合う。しかし、運動が長時間に及んだり、激しい労働や運動の場合には、乳酸系のエネルギー生成系がTCA回路による不足分を補うために動き出し、疲労物質である乳酸を過剰に生産してしまう。運動中よりも運動後に疲労を覚えるのは、乳酸系のエネルギー補給がTCA回路よりも遅く動き出し、蓄積された乳酸の排泄が遅れるためである。
●疲労の原因物質は乳酸の蓄積
筋肉が固く、動きが悪くなるのは、筋肉内への乳酸蓄積が原因と言われている。実際に疲労時や運動後の血液中の乳酸濃度を測ってみると、安静時に比較して明らかに高い値を示す。
乳酸はグルコースからピルビン酸(焦性ブドウ酸)へのエネルギー生産過程において、ピルビン酸からアセチルCoA(活性酢酸)→TCA回路への流れが悪くなったり、ピルビン酸の生成が異常に促進すると、生産過剰となり蓄積が起こる。
筋肉内の乳酸の排泄は、グリコーゲンの再合成、平常時の代謝のエネルギー源となるため、再びピルビン酸となりTCA回路に入ることによって行われる。
整理運動をすると疲労回復に効果があるのは、乳酸をピルビン酸に変えてエネルギー源として利用するエネルギー生成系が働き、乳酸の減少を促すからである。乳酸排泄にはアミノ酸であるアラニン合成に使われる経路もある。
手足や腰の筋肉でのエネルギー生産は、TCA回路とクレアチン系によって行われ、運動によって乳酸系エネルギーが動員された時に作られる乳酸は疲労物質となる。
しかし、同じ過程で生成された乳酸でも、心臓ではエネルギー源として消費するような機能が備えられている。手足、腰などの筋肉は乳酸が蓄積すると疲労し動きが悪くなるが、心臓の筋肉では動きが悪くなると生命維持に大問題となるため、乳酸蓄積が起こらないような仕組みになっているわけである。
●TCA回路を円滑に回転させる
TCA回路の起点となるクエン酸は、カルボン酸(-COOH)を3個もった有機酸であり、TCA回路はその他のイソクエン酸、コハク酸、オキザロ酢酸、リンゴ酸などの有機酸の連鎖によって回転している。
一方、玄米黒酢の有機酸の主なものは酢酸と乳酸である。酢酸は体内では、コエンザイムA(CoA:パンチテンに核酸の結合した構造で各物質の代謝や合成において生理的に重要な物質)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)の形で多くの重要な代謝過程に関与している。
例えばオキザロ酢酸と結合してクエン酸となりTCA回路に入ることや、コレステロールからステロイドホルモン、ビタミンD、胆汁酸などの合成経路に利用される。酢酸の代謝は糖質、脂肪酸やアミノ酸と同じで、最終の代謝経路であるTCA回路を経て、水と炭酸ガスに分解される。
体内で作られる乳酸は疲労の原因となるが、食品から摂取する乳酸は胃や腸で殺菌効果を示し、食物の消化吸収を助けることが知られている。吸収された乳酸は乳酸ナトリウムとして、クエン酸がクエン酸ナトリウムとして尿中に排泄されるように、比較的短時間で排泄される。玄米黒酢中の乳酸は、このように筋肉中に蓄積される事無く排泄されるわけである。
その他に、玄米黒酢中のコハク酸はサクシニルCoA(活性コハク酸)として、リンゴ酸は他の有機酸と同じように、いずれもTCA回路の一員として、代謝の円滑化に役立っている。
●玄米黒酢のアミノ酸とTCA回路
アミノ酸代謝とTCA回路の関係は図に示したが、タンパク質を構成する約20種類のアミノ酸全てがTCA回路を経由する代謝経路をもっている。逆の見方をすれば、約20種類のアミノ酸は、その代謝分解過程においてTCA回路の中間体である各種有機酸を形成し、回路の円滑化に役立っている。
アスパラギン酸とアスパラギンはオキザロ酢酸を形成し、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、アルギニンはαーケトグルタル酸生成する。活性酢酸であるアセチルCoAと活性コハク酸であるサクシニルCoAはアミノ酸によって形成される。
ただし、ピルビン酸は形成を経て代謝されるアミノ酸は、摂取過剰になると乳酸への変換が多くなり、組織の乳酸濃度が高くなる。この意味でも摂取アミノ酸のバランスが大切なのである。
●アミノ酸とビタミン類
ビタミンは色々な生理的反応を触媒する補酵素として、生体にとって重要なうぃようそである。そして、色々な生理的反応において、アミノ酸や有機酸と深い関わりをもっている。
ビタミンB1はピルビン酸とαーケトグルタル酸の酸化的脱炭酸の補酵素として働き、TCA回路の回転を円滑にし、エネルギーを生産するとともに乳酸の生成を抑制することによって、疲労の蓄積を防止している。
また、ビタミンB2(リボフラビン)は、L体アミノ酸脱水素酵素や脂肪酸の酸化反応触媒酵素の成分である。
ペラグラ(ナイアシン欠乏症、トリプトファン欠乏でも発症)に見られる紅斑、皮膚炎、下痢、口内炎、舌炎、痴呆などのビタミン欠乏症に絶大な効果を示すニコチン酸はトリプトファンから作られる。ペラグラはニコチン酸とトリプトファンの欠乏により生じるが、通常では低ビタミン、低タンパク質の食事により発病する。ニコチン酸はまた、生体の酸化還元反応の補酵素として、代謝上重要な物質であるニコチンアマイドアデニンジヌクレオチド(NAD)とそれのリン酸結合体のNADPの構成成分であるニコチンアマイドを生成する。
ビタミンB6が欠乏すると貧血を起こしたり、小児ではてんかん様発作もみられる。B6は生体では細胞へのアミノ酸輸送、アミノ酸の脱炭酸、アミノ基転移、硫黄転移などの反応をつかさどる酵素の成分として働いており、中枢や末梢での神経機能を維持するγーアミノ酪酸の生成にも関与している。
パントテン酸は栄養上必須のビタミンで、欠乏すると皮膚の角化、無毛症、副腎障害などがみられる。パントテン酸はアラニンとパント酸で形成され、糖質、脂肪やアミノ酸の代謝過程で生成される活性酢酸(アセチルCoA)の構成成分として重要である。また、アセチルCoAがコレステロールやステロイドホルモンの前駆物質であること、糖質、脂肪、アミノ酸の利用、種種のアセチル化に関与するなどパントテン酸の担っている機能は不可欠のものである。
チオクト酸はビタミンB1と同じように、ピルビン酸から酢酸を生じる脱炭酸反応やαーケト酸の脱炭酸に関与し、活性酢酸や活性コハク酸を形成するTCA回路機能促進に大事な役割をもっている。
その他、ビタミンCを分解するアスコルビナーゼの活性は酢酸で阻害されることはよく知られており、ビタミンとアミノ酸、有機酸の結びつきは強固である。
Part-3「玄米黒酢とコレステロール」に続く...



