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アミノ酸製造法No.1

一口にアミノ酸と言っても、サプリメントとして使われるアミノ酸だけではありません。工業用・食品用・肥料用など多用な分野で原料として使われます。また、その原料・製法も多多種多様です。

1950〜60年代にかけて、世界中で生化学、発酵化学、微生物学が急速に発展しました。これらの技術を使った生産物として、グルタミン酸やリジンといったアミノ酸の発酵生産に成功し、微生物を使った生産技術の開発に繫がりました。1960〜70年代には多くのに日本人研究者によって、微生物発酵技術によるアミノ酸製造法が発展するようになったのです。現在でもアミノ酸原料として多く製造されているグルタミン酸は、1960年代以降、それまで主流だった抽出法(原料のタンパク質を分解してアミノ酸を取り出す)から、微生物発酵法に切り替えが進んでいきます。

微生物発酵によるアミノ酸製造というのは、“微生物にアミノ酸を作らせる”方法です。一般的に発酵法によるアミノ酸製造というのは、原料となるタンパク質(アミノ酸の集合体であり、動植物の場合が多い)を菌類で分解してアミノ酸を取り出します。
しかし、微生物発酵法では、原料となるタンパク質は必要ありません。自然界にはアミノ酸を作り出す微生物が多数存在します。微生物自身が必要とするアミノ酸を合成するのです。微生物の種類によって、作られるアミノ酸の種類は異なります。微生物は自分に必要な量のアミノ酸しか作りませんので、効率良くアミノ酸を製造すためには、放射線処理や遺伝子組み換えで、より生産効率の高い微生物や菌を作り出すのです。

微生物発酵法はアミノ酸生産に広く使われる製造法ですが、微生物が生み出すのはアミノ酸ばかりではありません。時には有害な不純物を作ったり、その不純物が毒性を持つことも考えられます。1989年のアメリカで発生したトリプトファン摂取による死亡事故では、この製造法によるアミノ酸生産で発生した副産物が事故原因との報告がされました。後の研究では副産物だけが原因でなく、トリプトファンの単体大量摂取が生理作用を狂わした事が要因になっているとの報告もあります。この事故の原因になったアミノ酸製造メーカーでは、トリプトファンを作り出す微生物の遺伝子を取り出し、納豆菌に組み込んだ新しい菌を開発してトリプトファンの大量生産に成功したのですが…。事故後の研究では、多種の不純物が発生する事がわかりました。

遺伝子研究は急速に発達し、その応用でアミノ酸を安価に製造することも可能になりました。しかもこの方法は、現在では広く使われている製造方法です。ですが、一見無害な微生物であっても、予想もしない猛毒を作り出す可能性は否定できません。

トリプトファン事故からも推測できるように、食品として摂取が不可欠な必須アミノ酸であっても、体内の生理作用を狂わすほどの大量摂取は危険なのです。私達が必要とするアミノ酸バランスは、年齢によっても変化します。バランスを崩すほど、単一のアミノ酸を摂りすぎてはダメなのです。アミノ酸摂取は量も大切なのですが、それは「身体が必要とするアミノ酸バランスを保つ、複合アミノ酸で摂取」するという基本を踏まえてこそ有益なのです。

麹菌など古くから使われている菌の力を使い、タンパク質を分解してアミノ酸を作り出す発酵分解法は手間も時間もかかる方法です。伝統的な味噌、醤油、酒、酢などはこの発酵分解でタンパク質を分解して作っています。効率の悪い方法であり、特定のアミノ酸だけを大量に作り出すのには不向きな製造方法です。しかし、安全性が高く、バランスの良いアミノ酸を生み出すには最適の方法ではないのでしょうか?

株式会社健康ライフ 田中智

季刊情報誌「霧島黒酢通信Vol.1」より